サンボマスターのニューアルバムを聴いて考える日本語ロック論

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今夜のBGM・・・ サンボマスター / 僕と君の全てをロックンロールと呼べ

まいったなあ。音楽酒場史上、最長文になってしまった。

一聴した時に、ちょっと批判めいたことを書いてやろうと思って下書きを書いたんだけど、2回目、3回目と聴きこんでいくたびにどんどん良くなってきたぞ(笑)。



え~、もともと、日本のロックへの評価は非常にキビシイわたしです。
それはなんでかっていうと、やっぱり歌詞が全部わかっちゃうからなんです。あたりまえだけど。

ぶっちゃけ、洋楽ロックって何を歌っててもよくわかんないです。英語よくわからないし。
歌詞カード読んだりすることもあるけど、基本的に歌詞の内容を気にして聴いている、ということはあまりない。


わたしはマンガ好きなので、ちょっとマンガに例えさせて下さい(汗)。

NHKの「BSマンガ夜話」という番組に出てる漫画家のいしかわじゅんさんが

「マンガで重要なのは絵とストーリーで言うと、絵:ストーリー=5:5か、むしろ絵の方が重要度が高い」

というような内容のことをよく言ってひんしゅく買ったりしてましたが、個人的には深~く共感します。

ストーリーが伝えたいんだったら別に小説でもいいわけだし。だいたい、少年マンガのストーリーなんて作者だけじゃなくて編集者が一緒になって考えるもんでしょ?

マンガ家が自分の個性を打ち出していくのは、ストーリーよりも絶対、絵だと思います。その絵にどうやってストーリーをうまく載せて転がしていくのか、というのがマンガを読ませる力だと思います。でも別に、絵さえよければ、内容がどんなにくだらなくても所有したいと思うし。


これをポップソングに置き換えて考えると、絵ってのは曲(演奏)、ストーリーっていうのは歌詞に例えることができると思います。そうやって考えると、曲(演奏):詞=9:1か、むしろそれ以上に曲の重要度の方が高いんじゃない?つーか、別に歌詞がなくたって音楽としては成り立つわけですが。

音楽は理屈ではなくて、もっと肉体的なものだと思うのです。

だから、反戦フォークソングみたいなものだったらまた別なんだろうけど、こと日本語ロックを名乗るからには、何を歌うか、ということよりも、どうリズムとメロディーに載せていくか、ということの方が重要だと思ってます。

だから歌詞に意味なんかなくても、それがカッコよくリズムにのっているんなんらそれでOK!だと思うんですよ。


・・・・・・でもねえ、そうは言っても、いろんな日本語のロック(と呼ばれる音楽)を聴いてると、やっぱりどうしても歌詞の内容の方に耳が行ってしまうんですよね、日本人だから(笑)。あまりにもトロいこと言ってると「なんだよ、それ!」と思って、たちまち萎えてしまう。
これって矛盾ですよね。


これが最初に言った、日本のロックへの評価がキビシイ、というのにつながるわけです。(すごーく長いマエフリ!)


で、ようやく本題のサンボマスターです。

彼らの1stアルバム、「新しい日本語ロックの光と道」というタイトルを見て以来、ずっと気になっていました。だってこのタイトル、ダニー・ハサウェイの「新しきソウルの光と道」のパロディでしょ?それだけで気概を感じました。

しかも「日本語ロック」ときてる。今の若い人たちで「日本語ロック」なんて言葉を意識的に使ってる人はいないんじゃない?みんな日本語が普通と思ってるでしょう。つまり、最初に書いた、もともとロックに乗りにくい「日本語」という言葉を「いかにリズムやメロディーにのせるか」という、はっぴいえんどの時代からの命題を彼らが自覚しているということが、アルバムタイトルを見てわかったのです。

でも、まだこの時点では買わなかった(笑)。

次に出た、セカンドアルバムのタイトルが「サンボマスターは君に語りかける」。これ見たときは笑いました。だってスライの「アフリカは君に語りかける」のパロディーでしょ(笑)。
この時点で、「ああこいつらは音楽的に信用できる人たちだな。」と思いました。(←偉そう)

でも、まだこの時点でも買わなかった(笑)。

そして、店の有線で流れるシングル「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」を聴いて、はじめて彼らの音楽に触れたわけです。熱い!なかなかいいなあと思って聴いてました。

ちなみにドラマ「電車男」の主題歌だったそうですが、このドラマ一瞬たりとも見てません。

それで、先回の記事でもちょっと触れた、「クイックジャパン」65号での、サンボマスターのリーダー山口隆と、大瀧詠一との対談記事が出ました。それ以前に、62号で山下達郎との対談も載ってて、それも当然読んでたんですが、それらは、あくまで山下達郎、大瀧詠一が目的で買って読んだわけです。

ところがその65号に、山口隆選・洋楽アルバム130という記事があって、それを見ると、ロックはもとより、ソウルやファンク、ブルーズからジャズまで、ホントにいろいろ聴いてるんです。そのセレクションが実にわたし好みで(笑)。それらを見ただけで、彼の作るものにはよほどでない限りハズレは無いだろう、と思ったわけです。

よく、「人のモノマネはしたくないから、あまり人の作る音楽は聴かないようにしている」なんてことを平然と言ってのける「ミュージシャンもどき」がいますが、そういうのは絶対に信用できません。

ゼロから新しいものを創る、なんてのは、それこそ歴史の教科書に載ってるようなよっぽどの天才でもない限り、無理です。

それに、自分の好きな音楽だけ聴いているなんてのは、リスナーならばそれでよいですが、音楽を作る側としては勉強をサボっているとしかいいようがない。やっぱりどれだけ懐が深いか、引き出しをたくさん持っているか、というのがプロのミュージシャンとしては重要だと思います。

習作を重ねて、コピーやモノマネを重ねていくうちに、だんだんとオリジナルの形というものが出来ていく。だから、音楽は聴いていれば聴いているほど、絶対に深いものが創れるはずなんです。これは音楽に限らず、全ての芸術に言えることなんだと思いますけど。


そんな経緯を経て、とうとうサンボマスターのニューアルバム「僕と君の全てをロックンロールと呼べ」を買うに至りました(笑)。重い腰がようやく上がった。

「二人ぼっちの世界」を最初に聴いたときは、このダイナソーJrのような轟音サウンドを、このハイテンションで18曲70分ずっとやられたらちょっとキツイな・・・と思ったんですが、アルバム全体にちゃんと起伏があって飽きることなく聴けました。

「手紙」「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」は文句なしの名曲。こういった曲がアルバム前半にポンポンと入っているというのは、名盤の大きな要素です。④「君の声は僕の恋僕の名は君の夜」もいい。

歌詞がスッと入ってくる。歌の途中で、つぶやき、というか「語り」が入るのが彼のヴォーカルの特徴ですが、これはあきらかにソウル・ミュージックの影響でしょうね。まさにソウル爆発!といった感じ。あと、声がいい!シャウトしてると気付きませんが、じっくり聴かせる曲では、トータス松本よりもか細く、横山剣を感じさせるようなソウルフルでしかも切ない声をしてます。

ライヴでモッシュが起きそうな轟音パンク⑤「絶望と欲望と男の子と女の子」、インタールード的な小曲⑥で前半終了。

「戦争と僕」。「♪今年も故郷じゃリンゴがなったよ~」ってところでグッとくる。そういえば彼の故郷は福島だっけ。⑧「愛しさと心の壁」はパワー・ポップ風?⑨また轟音パンク「心音風景」⑩イントロとアウトロが笑える「ゲットバックサンボマスター」。このあたり、轟音サウンドが続いてどうしてもちょっと単調になる。⑪「あの娘の水着になってみたいのだ」はイントロのリフがストーンズの「氷のように」だ(笑)。

そして、このアルバムで一番気に入ったのが、⑫「二つの涙」アーチー・ベル&ドレルズの「タイトン・アップ」みたいなしなやかなソウルのリズムにのって、「♪僕らに何もないのは知ってるよ それでも僕は君を失うのはイヤさ」という歌詞が泣ける。⑬「離れない二人」もいいぞ!

「ベイビー優しい夜が来て」はスローバラード。⑮「全ての夜と全ての朝にタンバリンを鳴らすのだ」、ホントに鳴らされたらうるさくてしょうがないけど(笑)、この曲もリズムがしなやかな名曲。彼ら、エイトビートのパンクナンバーもできるけど、こういったソウル・ベースの曲に本質的な魅力があるように思います。

小曲⑯を挟んで、⑰「僕と君の全ては新しき歌で唄え」「何気なくて偉大な君」で終わり。1曲目とラストに6分強の大曲を持ってきたところに、今の彼らの充実ぶりと自信と勢いを感じます。

なにしろ、過剰なまでのヴォリューム、暑苦しさ。さらっとBGMとして聞き流されるのを拒絶する音楽です。この情念を受け止めるのには、聴き手側にも覚悟が必要。音楽と真剣に対峙するようなリスナーしかついていけないと思われます。ルックス面も含めて、大半の女子には無視されるでしょうね(笑)。その代わり、好きになってしまったらずっと追っかけていくでしょう。

わたしは、最初はスリーピースバンドの限界というか、山口の幅広いバックグラウンドを全て表現するには、スリーピースバンドでは足りないのでは、と指摘しようと思っていたんですが、聴いていくうちに考えが変わりました。多分、今はバンドの勢いを大切にしたいんでしょう。それに思いのほか、ベースとドラムの人も表現力があって、かなり幅広い演奏を聴かせてくれます。
終わってみたら大絶賛(笑)。

1st、2ndも是非聴いてみたいと思いました。



でも絶対、彼はそのうちソロ・アルバムを作ると思いますよ。

対談の中で、大瀧詠一が山口に

「君の中に俺があるのなら、それを魂に入れて、俺が唸るようなやつを作ってよ。」

と言っていますが、わたしも本当にそういうのが聴きたいと思いました。


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