ミスター・チルドレンは村上春樹なのか?

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今夜のBGM・・・ Mr.Children / sense

このブログは洋楽主体のブログなんですが、たまに邦楽アーティストのエントリーをすると、わたし個人の主観で、カテゴリを「J-POP」と「日本のロック」に分けてます。

で、どういった主観で分けているかというと、『最近のが「J-POP」で古いのが「日本のロック」じゃわい!』という乱暴な分け方も確かにあるのですが(汗)、実はもうちょっと違う視点も入れていて、文学に例えるなら大衆文学が「J-POP」で純文学が「日本のロック」という分け方も意識しています。つまり直木賞候補が「J-POP」で芥川賞候補が「日本のロック」。

じゃあ純文学と大衆文学の違いって何かを改めて考えてみると、一般的に言うと純文学は芸術性重視、大衆文学は商業性・娯楽性重視ってことですよね。純文学がアートで大衆文学がエンターテイメントと言い換えることもできるでしょう。また、自己の内面性を追及して表現するのが純文学で、他者を楽しませる目的で書かれたものが大衆文学、とも言えるでしょう。もちろん、どっちが偉いとかどっちが高尚とかそういう類のものではない。単に目的が違うのです。だからその区別自体もあいまいなもので、芥川賞作家が今では大衆文学としか言えない作品を発表してたり、その逆もあったり。

例えば村上春樹は、現代の日本を代表する純文学作家として世界的にも評価されていますが、同時に圧倒的に一般大衆にも支持されていて、作品を発表すると「1Q84」のように出版界の記録を塗り替えるほどのベストセラーになってしまうという稀有な作家です。最近は往年の名作「ノルウェイの森」が映画化されてメディアでひっきりなしに取り上げられるなど、商業主義の波にも(本人の意思とは関係なく?)乗っかっています。

でも作品を読んでみるとやっぱり純文学以外のなにものでもないというか・・・決して読みやすくはないし、ヘンだし(笑)、読み終わって「あー面白かった」と納得する要素は少なく、「結局何だったんだ?」みたいな、心に多くの引っかかりを残します。


この1週間の間、ミスター・チルドレンのニューアルバム「sense」をずっと聴きっぱなしでした。ミスチルのアルバムが出ると毎回1週間ぐらいは他の音楽を聴かずに集中してミスチル漬けになってしまうのですが、ようやく少し抜け出した感じなのでやっとブログが更新できる(笑)。で、何を書こうかと思ったときに、さっきの「J-POP」と「日本のロック」のカテゴリ分けの話に突き当たりました。

ミスチルはこのブログの過去の記事では「J-POP」のカテゴリに入れています。それは今作を聴き終えた印象でも変わっていません。「究極のJ-POP」とでも言えばいいのかな?ミスチルが「ロック」というイメージは今も昔もありません。勘違いして欲しくないのは「ロック」だから上ね、「J-POP」だから下ね、なんてことはこれっぽっちも思ってません。ロックだろうがJ-POPだろうが、いいものもあるし悪いものもある(←byスネークマンショー)。目的が違うだけです。

「J-POP」ゆえに、ミスチルはドラマ主題歌の依頼も受けます。いわゆる発注仕事です。ドラマの内容を聞かされて、その内容にあった主題歌を作ってくれ、といった発注に合わせて曲を作ります。だからといって、ドラマ「オレンジデイズ」の主題歌「sign」や、「14歳の母」の主題歌「しるし」、「コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~」の主題歌「HANABI」が不朽の名曲であることに変わりありません。
ちなみにわたしはドラマ見ないので、それらの曲がドラマの内容に相応しいのか全くわかりません。(「14歳の母」はちょっとだけ見てましたが。)

作詞作曲を手がける桜井和寿氏の才能については今さらわたしなんぞが言うのもおこがましいですが、本当に素晴らしいです。メロディメイカーとしての才能は、よくもまあこんなに長年に渡って枯れることなく次から次へと良いメロディが・・・と呆れるほどですが、よく聴くと昔の曲とどこか似ているという・・・これはもう桜井節といってもいい心の琴線に触れる彼独特のメロディ回しを確立しています。

それよりもわたしが凄いと思うのは作詞の能力です。メロディは天から降ってくるものですが歌詞は努力してのたうちまわってヒネリ出すものですからね。

今回のアルバムにも、彼の内面を吐露したと思われる心に突き刺さる鋭いフレーズや、誰もの日常にあるシーンを連想させるおもわずホッとするような優しいフレーズが満載。しかも彼の場合は日本語の響きを大切にしていて、意味のない横文字のフレーズをほとんど使わずにメロディラインに巧みに言葉を乗せていく。この乗せ方が絶妙に上手い!歌詞の押韻についてもラッパー顔負けというぐらい巧みで、彼ほど意識的に押韻をやっているのは日本のアーティストでは数えるほどと思われます。日本のボブ・ディランといったら言いすぎ?とにかく作詞作曲能力について円熟しきった今、現役ミュージシャンでは誰も到達してない高みに達していると思います。


こうやって書いていると桜井さんにはロックな内面を感じる部分とエンタメの職人を思わせる部分とが共存しているように思います。それでもミスチルをロックというより「究極のJ-POP」と呼びたくなるのは、プロデューサーの小林武史氏の存在でしょうね。おそらくバンドメンバーだけではもっとゴツゴツとしたロック寄りなサウンドになるんでしょうが、ミリオンセラー獲得数シングル10作、アルバム12作、アーティスト・トータルセールス約5500万枚という国民的モンスターバンドになり得たのは、彼が口当たりのよいアレンジを施して毒を中和しているから。これは明らかに彼の功績だと思います。

よく小林プロデューサーの不要論や出しゃばり過ぎを批判する書き込みを見かけますが、それはコアな一部のファンの願望であって、現実には彼なしのミスチルはあり得ないと思います。ミスチルの曲にはよくイントロ一発で心をグッとつかむ印象的なメロディがあります。先に挙げた「sign」「しるし」「HANABI」もそうだし古くは「innocent world」や「Tomorrow never knows」も。あのイントロのメロディーをほとんど作っているのが「イントロ大魔王」こと小林プロデューサーということです。彼は完全にミスチルの一部であって、彼がいなければ今のミスチルのポジションは無かったのではないかと思います。(桜井氏の才能でそれなりのビッグネームになっていたとは思いますが。)



で、ようするに何が言いたかったかというと、村上春樹は限りなく大衆化・エンターテイメント化した純文学で、ミスター・チルドレンは限りなく純文学に近い手触りを持ったエンターテイメント音楽である、ということが言いたかったわけです(笑)。それだけのことが言いたかったのに説明が長いっちゅーの。まっ、ミスチルがJ-POPかロックかなんて多くの人にとってはどうでもいいだろうし、本質的には全く意味のないことですけどね。つくづくわたし、こういう言葉遊びが好きなんです。


それにしても今回のアルバム「sense」、先行シングル一切なし、発売前日までタイトルすら発表されないという前代未聞のプロモーションで打って出たけど、初動1週間で50万枚強と、予想よりも少ない売り上げとなった。それでも十分凄いのだけど、売る立場の人間としてはもっと売れてくれないと非常に困る。やはりタイアップガンガン付けないと売れないのか?内容が素晴らしいだけに、じわじわと売れ続けてくれることを祈るしかない。頼むよ、本当に。


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